防火管理者の業務
1)消防計画
防火管理者は、管理権原者の指示を受けて建物の防火管理の基礎となる「消防計画」を作成し、消防長又は消防署長に届け出なければなりません。(規則第3条)
消防計画は、火災の未然防止のための、建築物、火気使用設備器具、危険物施設等の自主検査、あるいは、消防用設備等の自主検査など、日常の防火管理の実施要領とそれを行うための予防組織を定め、さらに、万一災害が発生した時、被害を最小限にくいとめるために必要な自衛消防組織を編成し、その活動方法、訓練などの実施細目を定めたものです。
防火管理業務は、建物内で働くすべての人の協力があってはじめて適正に遂行されるものであり、この計画に基づいて、それぞれの役割を的確に果たさなければなりません。そのため、内容もすべての従業員に周知徹底されるよう、形式にとらわれず、具体的で、誰にでも理解できる、実効性のある計画にできます。
2)消防計画の作成時期
消防計画は防火管理者が管理権原者の指示を受けて作成するものです。よって、その建物に消防計画が作成されていない場合は、防火管理者に選任されたらすぐに作成する必要があります。また、すでに消防計画が作成されている場合であっても、定期的に見直しを行い、内容を変更しなければならないとき、新規作成時と同様に消防長又は消防署長に変更の届出をしなければなりません。
3)消防計画の作成単位
消防計画は防火管理者が作成するものなので、作成単位にあっても防火管理者の選任単位と同一になります。つまり一つの建物又は同一敷地内に建物が複数あっても管理権原者が同じであれば一つの消防計画の作成で構いませんが、一つの建物の中に複数の事業所やテナントが入り、管理権原者も複数いる場合にあっては、それぞれの管理権原者ごとの消防計画が必要になります。
4)消防計画に定める事項
消防計画に定める事項については規則第3条に定められています。しかし、消防計画は、それらの事項について形式的に定めればいいものではなく、建物の用途や規模(階数、面積、収容人員等)、営業形態等を十分考慮して、実態に即した消防計画を作成する必要があります。消防計画に定める内容は、次の事項です。
- 自衛消防の組織に関すること
- 防火対象物についての火災予防上の自主検査に関すること
- 消防用設備等又は特殊消防用設備等の点検及び整備に関すること
- 避難通路、避難口、安全区画、防煙区画その他の避難施設の維持管理及びその案内に関すること
- 防火壁、内装その他の防火上の構造の維持管理に関すること
- 定員の遵守その他収容人員の適正化に関すること
- 防火管理上必要な教育に関すること
- 消火、通報及び避難の訓練その他防火管理のために必要な訓練の実施に関すること
- 火災、地震その他の災害が発生した場合における消火活動、通報連絡及び避難誘導に関すること
- 防火管理についての消防機関との連絡に関すること
- 増築、改築、移転、修繕又は模様替えの工事中の防火対象物における防火管理者又はその補助者の立会いその他火気の使用又は取り扱いの監督に関すること
- その他防火対象物における防火管理に関し必要な事項
また、建物の管理形態、所在地、施設に応じて次の要件に該当する場合は、それぞれ法令で定められた内容を盛り込み消防計画を作成しなければなりません。
ア 防火管理業務の一部を外部に委託している場合
・受託者の氏名及び住所
・受託する業務の範囲及び方法
イ 管理権原が複数に分かれている場合
・権原の範囲
ウ 東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法で指定された「推進地域」のうち国が決定した東南海・南海地震防災対策推進基本計画で定められた地域(※)にある施設の場合
・津波からの円滑な避難の確保に関すること
・防災訓練の実施に関すること
・被害の発生の防止又は軽減を図るための教育及び広報に関すること